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花失せては面白からず

花失せては面白からず / 城山三郎


ゼミ中に私語をしていて教授に怒られ、ペナルティで課された本(苦笑)。
以下、提出した書評。





「花失せては面白からず―山田教授の生き方・考え方―」(城山三郎 角川文庫 1999)の書評を行う。書評と言うと、批評や評価を行うものと捉えるべきであるが、このレポートの目的を踏まえ、純粋に読んだ感想、特に共感、感化されたことを中心に述べさせていただくことにする。
 大きく分けて、私がこの本から学び、感じたことは三つである。経済学という学問。世の中の在り方を追求し続ける姿勢。師と呼ぶべき存在。これらにおける私にとっての新たな発見と共感を、本書の書評に代えて述べていく。
 まず、山田教授の経済学という学問への姿勢が興味深かった。山田教授の経済学に対する考え方を最も窺い知ることが出来るのは、第一章に記された、著者である城山三郎の学生時代に送られた手紙である。この手紙の私なりの解釈はこのようなものである。すなわち、経済学を含む社会科学において大切なことは、外面的な言葉や理論にとらわれず人間的関係の事実を見ることである。人間的関係とは、階級関係を中心としながら利害や理想の様々な分裂を含むものである。なぜならば、人はそれぞれ自らのイデオロギーを持つからである。つまり、当然ながら人はそれぞれ異なる思想・主義のもとに行動するが、それによって生まれる人間的関係をいかに客観的に見ていくかが大切である。これは一見すると、当然のように聞こえるが、私にとっては非常に新鮮に感じられた。というのも、私は学部に入学して以来、経済学というものに興味をもつ暇もなく、既に体系化された経済の理論を叩き込まれた典型的な多くの学部生の一人である。経済学を学ぶ意義を考えることを怠り、需要と供給の均衡点や、生産者の利潤を如何にして最大化させることばかりに目を向けてきた。その過程で私が漠然と思っていたことは、経済学の理論に登場する消費者や生産者を始めとするプレイヤーが都合のよい仮定のもとに合理的に行動するということに、実際の世界との乖離や違和感を持たずにはいられなかったということである。しかし、山田教授の手紙を読み、経済学の追求するところは各々のイデオロギーを持つ人間的関係の事実をつかむことであるという考えに触れ、どこか納得出来た気がする。私なりの経済学という学問の解釈としては、人間的関係の考察とそれに対する客観的な推測という矛盾する二つのアンビバレントな状況の中で戦うことが経済学の使命ではないかということだ。
 次に、本書を通して描かれている山田教授の、世の中の在り方を追求し続ける姿勢に、私自身が感化された旨を述べる。前述の社会科学の在り方についての考え然り、資本主義と社会主義についての議論然り、引退後のゼミナール然り、教授は議論することを好んだことがよく分かる。特に興味深いのは、著書である城山三郎氏との二人ゼミナールである。経済学を志半ばに文学の道へと進んだ城山氏との議論は、経済学の領域を超え、広く世の中の在り方についてのものであったはずである。経済学を目的とするのではなく、世の中の事実を捉えるための手段として捉えるところに、純粋な知的好奇心の高さを感じた。第四章の終りには、病に衰弱した山田教授が声を振り絞って資本主義と社会主義の議論における絶対論的な考えの誤りを指摘しているシーンが印象的だ。私が一橋大学を志した時分の気持ち、ゼミを選ぶ上でどうせならば多くを学べる環境が良いと考えた時分の気持ち、そうした初心を思い出し、また、知的好奇心を常に求め努力することの凄さと大切さを痛感した。
 最後に、著書・城山三郎氏と師・山田教授の関係について述べる。山田教授は、ゼミナールに師弟関係を当てはめることを嫌い、ともに研究し議論し合う同士であるとみなしている。一方で、城山氏は、経済学の道から文学の道に移行するに際に、山田教授の引け目を気にしていたと述べている。こうしてみると、一般的なイメージの師弟関係とは程遠いように思える。しかし、城山氏にとっては、きっと山田教授はいつまでも師であり続けるのだと私は思う。師と同じ道を歩まずとも、同じ見解を示さずとも、互いにより高い次元で議論し高め合い認め合うこと、それらを通して自らの生き方・考え方に影響を与えてきた山田教授は城山氏にとってやはり永遠の師であるのだ。現時点で、私は企業への就職を考えており、そうなると経済学を専攻するのも残りわずかである。しかし、たとえ民間企業に就職し、ミクロなビジネスと対峙することが私の役割となっても、常に世の中の在り方についてのマクロ的な思考を洗練しつづけていけたらと思う。そしていつかゼミのOBとして、先生と議論出来るようになれたらと思う。
 以上、書評と言うにはお粗末な感想文となってしまったことは否めませんが、自分に対するインプリケーションを意識しながら読ませていただきました。

以上



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2009.12.25 Fri l 書評 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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